【フランス スマートグリッド】

2010年6月記載

限りある資源の中、再生可能エネルギーを使いこなすスマートグリッドが欧州(フランスを始め、デンマーク、イタリア、スェーデン他)でも注目されている。スマートグリッドは次世代送電網とも呼ばれ、広義の意味では、専用機器やIT技術によって電力の流れを供給需要の双方から制御し、最適化できる送電網である。

これには発電量、需要量の調節と電質安定のために蓄電池が重要な役割を示し、例えばフランス電力公社(EDF)は、離島などに整備する大規模太陽光発電や風力発電向けに150メガワットのNAS電池を用意した。

世界的な環境資源保護を背景に、フランス環境エネルギー管理庁(ADEME)は、スマートグリッド及びスマートな電気システムに関する研究プロジェクトも進めている。これらは電力消費量の管理抑制と効率的なエネルギー再生利用システムの開発を目的としている。プロジェクトの概要としては、送電網に再生可能エネルギーを大規模に組み込むシステム、スマートグリッドの普及に関連した電力需給関連の新サービスやプロダクトの有効性検証を目的とする。

既に話題に上っているスマートメーターは通信機能搭載電力量計であり、遠隔的に電力量を監視・運用できる。これは将来的には情報通信ネットワークと電化製品網との融合であり、その複合性から生み出されるシナジー新技術に期待している業界は多い。

ただ、一方では、フランス電力会社EDFがVoltalis社の家庭用節電ツールデバイス普及に伴うEDFの喪失利益の補填を同社に要求したというエピソードもある。このツールは各家庭に電力節約デバイスを設置し、モニタリングによって非効率的な電化製品を自動的に制御し、電気代を節約するというシステムである。スマートグリッドのロジックは次世代電気技術ながらも既存の大手電力会社のビジネスモデルへの矛盾点を常に内包しているので、このような事件はその一例といえよう。

【参考】フランス環境エネルギー管理庁(ADEME) http://www2.ademe.fr/servlet/getDoc?cid=96&m=3&id=63687&ref=23117&p1=B