【仏企業給与交渉】

フランス企業にはよく給与交渉があります。 (日本の外資でもありそうですが・・。)

これは何かというと、年に一回、人事系列にいる上司と面談し、年間実績、勤務態度、今後の方針などに基づいて、給与の上昇率を話し合いの中で決めるというものです。 通常、物価が上がっていればわずかなりとも給与も上がるのが通例です。

自分なりのプレゼン資料を用意する人もいれば、 その時期近くに仕事のアピールが異常に激しくなる人もいます。尚、上司側でも交渉の苦手な人は想定問答を用意したりするようです。 従業員は少しでも昇給を願い、管理側は少しでも昇給を抑えたいと

考えているので、これは多少の緊張をともなった駆け引きになりがちです。

ただ、よくみていると、その場の言葉よりも、日ごろの人間関係や、 ポジションが重要であり、実際の査定は半年くらい前から決まっているような気がします。当たり前かもしれませんが・・。私は個人的にはこれを給与の額だけではなく、会社が自分をどのランクにみているかを観察するよい機会だと思います。

簡単にですが人材をA.B.Cに分けた場合を考察してみましょう。

●ランクA人材:

会社に必要不可欠。引き抜き防止必須。 転職、辞職されないように気を使う。 そのため予算の許す範囲で給与を上げる。

●ランクB人材:ある程度役に立つ必要な人材。 対等なつきあい。一番構成数の多い人材だが、何かの機会でAやCに移動する。

他要件との兼ね合いで給与が変化する。

●ランクC人材:問題があると上司にみなされている、または性格が合わない人材。マイナス要素が多いのだが、解雇手続きの手間まではとりたくはない。ダウンサイジングリストには載っている。 給与はあまり増えにくい。

勿論、Aの下とかBの上などもありますが、同じ主張をしてもランクが違えば、管理者側の対応は違うでしょう。

例えばある人が面談にて、

「やっている仕事量が多くなったので多めに昇給してほしい」と申告したとします。

ランクAの場合は管理者は、気を使いながら他者よりも数%増しで「君の言うことはもっともだ」と昇給させます。

これがランクCだと「給与を増やせば仕事を多くこなすというが、ということは今の給与でも、本気を出せばできる仕事量じゃないか?」

と、なぜか批判の対象になってしまいます。

このように、主観的な判断や、面談者との相性にも左右されるため、私はできるだけ客観的なデータや数値を土台に話し合うべきと考えます。例えば営業なら売上げや顧客数、バックスタッフなら仕事を何%効率化したか?研究・開発なら利益に対する貢献度などです。

当然のことながら、こういった資料を用意しろとは誰もアドバイスしてくれないので 自己防衛のために、自分で用意すべきですね。

(既に常識として行っている人には当然のことかもしれませんが・・。)

また自分の一方的なPRのみならず、相手のニースを聞くこと、相手(会社)のニーズを満たすにはどのようにしたらよいのか?という話し合い、相互情報交換の機会として有効活用する態度も望ましいかもしれません。

同時に給与交渉は自分が社内でどのように思われているのかを診断するコミニュケーションチャンスでもあります。

そこでの成果は今後のキャリアプランの中で役に立つかもしれません。

ちなみにこのような交渉のない企業もあり、この場合は従業員代表たちが経営陣と労使交渉し、自動的に昇給%を決めてくれます。

こっちの方がかなり楽で公平さを感じます。

在仏日系企業の場合でも仏人従業員が多ければ、このような交渉形式になりやすいですね。一般的に仏人のほうが交渉有利なようですが、日本人同士でもやり方によるでしょう。昇給、インセンティブ、叱責、罰則、あめとむちの手法なので、どれをどの配分で使うかは人事担当者の裁量と思います。交渉相手が複数いる場合は話の通じそうな人に相談する方が良いのではないでしょうか?

ちなみに前述のランクABC人材は人事用語においては3つのRという言葉として使われ、「リクルート(Recruit)」、「リテイン(Retain)」、「リリース(Release)」などがこれにあたります。

※最後に・・・ランクAの人も上司が変わったあとにいきなりランクCになったケースもありますし、ランクCの人が部署異動、上司変更でランクAになった場合もあります。そのようなこともあるので短期的に考えず、長期的な視野で自分の仕事を大事にすべきだと思います。

執筆 2008年10月