「こころ」夏目漱石 感想1-前半

「こころ」夏目漱石

感想1-前半部分

最近、夏目漱石が著作した「心」という作品を精読し始めた。分からない単語の意味を全部辞書で調べながら読書しているのでまだ100ページほどしか読めていない。けれども第一部分が終わり、非常に感動したと言える。小説は3つのパーツでできている。第一部分は「先生」と呼ばれている「謎の人物」と若い書生とのやり取りを描いている。何故「謎の人物」を言っているかというと彼は心の中で大きな悩みを抱えてにもかかわらずその理由が全くはっきりしないからである。先ず「先生」という呼び方自身もとても曖昧。名前も知らない、外見もあまり分からない。それなのに主人公である若い書生が彼にものすごく惹かれる。まるで一目惚れみたい。これはこの小説のもう一つの不思議な現象である。

話が前に進むと先生が「恋が罪悪感」と謎めいた言葉

を言う。おかげで読者が彼の心の悩みについてヒント得られるかもしれない。推理小説のようにジグソーパズルのピースが少しずつ当てはまるのだが、謎はまだ解けない。読み手が極めてはらはらするのだ。

最もこういった「スリル満点のあらすじ」を書きながら、著者が美しい自然の世界を登場人物たちの背景にする。これは私が一番感動した理由の一つである。つつじ、椿、藁葺、柘榴、楓、八重桜、枳殻などの様々な木やお花が夏目漱石の小説を色鮮やかにしてくれる。それに加えてこの季節用語が時間の流れを表しつつ、先生の心の中に入っている沢山の混じりこんだ感情の鏡のような役割も果たしているのかもしれない。

後は色もとてもきれいだと思った。海老茶色、樺色、鳶色など。

時代を表す言葉も豊富に出ている。例えば水菓子(果物)、ゴム製の頭巾、切支丹、玉突き(アイスクリームの玉をビリアードの玉に例えている)、猿股といった単語である。おかげで滑稽な雰囲気を生み出すところもある。

つまり夏目漱石が人間の葛藤している曖昧な内面の世界を描きながらその時の時代と季節の移り変わりを同時に感じさせる。自然を癖のように眺めている先生が何を考えているのだろうか。