砂の女 感想1-昆虫博士

「砂の女」安部公房

感想1-昆虫博士

先週、20年ぶりに勅使河原宏監督が作り出した「砂の女」という白黒の映画を再び鑑賞した。この映画は安部公房という日本人作家が書いた長編小説に基づいている。小説自体はまだ読んでいないのだが、映画は極めて印象的であった。

趣味で昆虫を集めている都会住みの日本人教授がどこかの砂漠の奥までそれらを見つけるため行く。彼は夢中だったので夜遅くなってしまった。帰りのバスがないと気づき、その近くに住んでいる村人と相談に乗った後に村人は彼を一泊泊まらせてくれる家まで案内してくれる。けれどなんとその住まいが砂の穴の中に建てられているのだ。それでそこまで降りるために縄梯子を使わないといけない。

その住宅に暮らしているのはたった一人の女性である。招かれた先生は驚くばかり。何故ならば相手の女性が毎夜中家の周りにある砂の壁から崩れ落ちる砂を朝まで一所懸命に払うからである。そして彼女が払った砂を箱に入れてから上に待っている村人たちが持ち上げる。重労働である。

次の朝は昆虫博士が出発しようと思ったら、縄梯子がなくなっていて、彼は砂の穴から逃げられないという残酷な事実に気がつく。しかし彼はどうしても自分の住んでいる東京に帰りたい。様々な手段でエスケープしようとするのだが、全てが水の泡になってしまう。

彼の逃げようとする必死な努力に比べれば、女性の方が冷静な顔をする。彼女には砂の穴以外の世界を知らないからだと思う。けれど話の結末が面白い。

最後に先生に逃げられるチャンスが訪れる。それなのに結局彼は逃げないことにする。彼は水たまりの場所を発見したからである。すなわちこれからはもう一生水に困らない手段を見つけたわけである。それで彼は東京での生活を諦めて、砂とともに生きる選択をする。これは非常に考えさせられる。彼は贅沢な暮らしを捨てて、質素な生活への方向転換だと思う。